THINK
アートクルーズしよう!
2024.03.14
2024年2月29日に、art cruise galleryが産声を上げました。
まだ数日が過ぎたところですが、大変な好評をいただいております。
何もかもが手探りの中で、指針を導き出し、真摯に、そして大胆に、
表現を模索した結果です。
art cruise galleryというネーミングは、ファッション業界(特にヨーロッパのハイブランド)に存在するシーズンカテゴリーである『クルーズコレクション』から着想を得て、私が名付けました。
『クルーズコレクション』とは、SSでもAWでもなく、真冬に展開される夏服のカテゴリーでして、富裕層や生活に拘ってクリエイトしている層は、「冬はあったかいところで過ごす」という理由からのもの。僕ら庶民には憧れの考え方です。
art cruise gallery(以下acg)は、虎ノ門という場所柄、富裕層に向けた訴求も視野に入れた場所なので、その意味は親和性がありますが、肝心なことはそれではなく、人が生み出すものの価値や使い方は、向き合い方や生き様、審美眼などで如何様にも変化することが、acgの考え方に近いという理由です。
母体のbaycrewsはアパレル大手ですので、その由来感は、よくマッチします。
Baycrewsの「クルーズ」とart cruise galleryの「クルーズ」も韻を踏んでいます。
そんな名を持つギャラリーに対して、僕が想っていることを少し書きますね。
第一回目の展覧会は『PLAY w/HOKUSAI』。
葛飾北斎の名作シリーズ「北斎漫画」の展覧会です。
古き良きものを守り続けることは、後継者に課せられた使命でもありますが、「守る」ということの意味が理解できないことによく出会します。
きちんと保護することは当然のことなのですが、保護し続けることで、未来に向けて何を生み出せるのか?
物自体は残り続けるけど、「古き良きもの」という概念を持続させることに、私はいつも疑問を感じています。
地球に暮らす人々の生活様式は当然劇的な変化をしていきます。
国と地域の仕組み、趣味趣向、科学技術、その他全てのものが変化し、価値観ごと変化し続けていきます。
その激流の中で、「古き良きもの」を守り続けて受け継ぐことは、どうゆうことだろうかと、常に考えます。
守ることはできても、受け継ぐことは難しいことです。
この場合の「受け継ぐ」とは、時代ごとにきちんと愛される名品として存在し続けることを言います。
この愛されるの意味は、懐古主義ではなく、その時代ごとに最先端の愛をそそがれるものとして存在させるということです。
そのためには、その時代にしかできない価値観に融合させて、新しい存在感を生み出すことが必要です。
いまの日本では、古いものはその時代感のイメージに当てはめて訴求する場合がほとんどでして、江戸時代のものは、江戸時代感を伴わせることが大前提になっている感じがします。
acgでは、「受け継ぐ」ことを全力で展開します。
このギャラリーは、コンテンポラリーアートをベースに展開しますが、今回の「北斎漫画」も、私たちはコンテンポラリーアートとして向き合っています。
昨年、私が手がけた『ANDY WARHOL KYOTO』という展覧会でも似たような議論をしました。
80年代のポップアートですが、そんな最近のものですら、すでに現在では古典的な見方が強いです。
その古典感(ステレオタイプのANDY WARHOL感)で向き合ってしまったら、ただの懐古主義になってしまいます。
したがって、この時代に展覧会を作る意味をしっかりと考えました。
今しかできないWARHOLへの解釈と訴求を見つけることを主眼とし、デザインを展開した結果、今現在、注目されているコンテンポラリーアート群にも勝る訴求力を発揮したのです。
人が生み出したものは、全て尊いです。
それらは時代を乗り越える力を隠し持っています。
時代という荒波を乗り越えるのではなく、波形を捕まえて美しいクルーズをすることで、
どの時代でも最先端のものに存在意義を進化させられると信じています。
これは、アートという認識ではないものに対しても、アート的な価値を与えられる行為でもあります。
acgは、人が生み出した素晴らしく美しいものを、ジャンルを問わず、
今の時代にしかできない向き合い方で展開していきます。