THINK
アートの役割
2024.03.14
僕は常々、アートにはたくさんのポテンシャルがあるけど、
それが抑え込まれていると感じています。
本来の役割があまり果たせていないと思うのです。
アートの1番の強みは、テンポラリー(一過性)の立場をとれることです。
建築物なんかは、建てちゃうと、そう簡単には壊せない。
でもアートは動かせるし、無くせる。
一時的に場所のオーラを変化させて、消えることができる。
それはもしかしたら長く残すよりも、人に影響を及ぼす可能性がある。
飽きること、マンネリ化すること、そんな感じのネガティブ思想をコントロールできる。
Think 1で触れた、『マツモト建築芸術祭』では、街中の名建築(空き家とか、廃墟とかも素敵なので名建築と呼んでいます)に、アートを約1ヶ月だけプロットし、人々が使い方のわからなくなった建築に、新しい価値を発生させる芸術祭です。
もちろん、空き家や廃墟だけでは無く、文化財の空間とか、近代建築にもその効果を発生させてきました。
マツモト建築芸術祭 中島 崇
マツモト建築芸術祭 鬼頭健吾
このことこそ、アートの最大の役割ではないかなと思うのです。
クリストとジャンヌ=クロードという夫婦のアーティストがいます。
歴史ある街の象徴とも言える建築物などを布で包んでしまうアーティストです。
何百年も市民に愛され、見つめられてきた建築が、少しの間、全く異なる異物に変化します。
21_21 Design Sight より
これはパリの凱旋門を布で包んだものですが、とにかく衝撃が大きい。
そして、面白くて素敵です。
このアートが少しの間だけでも街に存在することがもたらす、意識の変化や新しい可能性は無限大です。
パリのように、その土地に歴史の積層があればあるほど、受け皿としての潜在能力が大きいと思います。
このアートはそれを植え付けて消え去るのです。
これが永遠に残るものであれば、逆効果を生んでしまうでしょう。
これらを踏まえると、街の再生や、そもそもの街づくりに、アートが果たす役割は、きちんと認識して広めていきたいと想うのです。
そんな感じで、第3回目の『マツモト建築芸術祭2024ANNEX』が現在開催中です。
3月24日まで。
今回は、周遊型ではなく、春から解体が決まっている旧松本市立博物館の建築にほぼ全てのアートを展示した特別回となっております。
その理由でANNEXと名付けております。
壊れゆく名建築の記憶のアップデートを最後に行い、その場所のオーラを人々の心の中に刻む行為です。
これもまた、アートが果たせる役割のひとつです。
皆様ぜひ、松本へ足をお運びください。